こんにちは。メッツ新宿絵画教室で、主に水曜日の昼と夜を担当させていただいている講師の坂本です。
担当させていただいている曜日からK会員の作品をご紹介します。会員さまは主にデッサンを習得したいとのことで、ご受講されております。ご自身の日頃なさっている活動に役立てればとの事で、絵画制作の基礎という側面だけでなく、3次元を明暗で平面に表すこと自体を、研究的にとらえて制作されています。
体験のリンゴから始まり、ビン、野菜とステップアップを重ねる中で、ひとつひとつの解釈や考え方を整理し、実直な制作をされております。そんな地道な制作過程のひとつの成果が今回の作品となりました。
モチーフはミケランジェロ制作のダビデ。その目の部分の石膏像です。わたくし個人は毎回、黒目の部分のハートマークが気になってしまうのですが、それはさておき、石膏像を描く場合に沸いてくる疑問が、「白いものを黒で描く」という至極当然な違和感ではないでしょうか。
会員さまは、その疑問に、ひとつひとつ仮説と検証を重ねながら、制作されておりました。石膏像は明暗によって形態を平面に表す訓練材料として、長く使用されてきました。少し緊張してしまうモチーフではありますが、長い石膏デッサンという歴史には、それ相応の理由と原理がある事も事実です。会員さまの制作動機が研究
的である事も相まって日々の教室では、わたくしも改めて明暗によるデッサンを考えさせられました。疑問に対して、一歩ずつ解決してゆく過程と共に、充実しリアルになってゆくデッサンに、決して向き不向きだけではなく、着実な探求が一つの喜びにつながる事を実感させて頂き、講師としても心動く作品となりました。氏の探求は留まることなく続いており、わたくしも勉強の毎日に、心地よい緊張感を持って教室に向かう日々を楽しみにしております。
瀬さ空のA会員様です。
まさに、研究室といった趣きの制作風景。