企画講習会「水性木版で年賀状」を作る



今年も後わずかとなりましたが教室会員の皆にはお元気で腕をふるって制作の事と思います。
このたび銀座教室の佐竹講師が、来年の年賀状をオリジナル木版画で制作しませんかと、木版画の制作講習会を企画開催しましたのでここに紹介いたします。
 
今年は銀座教室のみの開催でしたが、来年は年賀状用木版画はもとより、風景などの木版画制作も入れました講習会を、佐竹講師指導のもとに新宿教室でも開催したいと思います。
 
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今日は銀座教室の講師を務めております佐竹です。
 
去る11月14日、月曜日午後クラスでは企画講座「水性木版で年賀状」を開催致しました。9名の会員の皆様にご参加いただけ、素晴らしい手作りの木版画年賀状が完成しました。
講座では、水性木版の制作方法について、プロセスを追って、道具の使い方、彫り方、摺り方など、デモンストレーションを交えてご紹介致しました。
はじめに、木版画の特性や歴史について、参考作品を紹介しながら理解を深めていただきました。年賀状の原画は教室で準備のイラストから、あるいはデザインをお持ちになられた会員さまもいらっしゃいました。
 

右手前から安井会員、矢野会員、佐竹講師、左手前は田井会員、奥に槇峯会員、加藤会員です。導入では江戸時代の浮世絵から現代作家の作品まで、木版画をはじめ様々な版画を紹介しました。
 

いよいよ制作に入ります。木版画は版木に反転した像を彫らなければならないため、版木に、レイアウトを決めた原稿をラッカーシンナーで転写します。
 

転写が終わった版木を彫ってゆきます。彫刻刀の基本的な使い方を学んで、さっそく作業開始です。
 

田井会員の彫りの様子です。まずはアウトラインを彫ります。細かな作業ですが、ラインがとてもきれいに彫られています。
 

渡辺会員は北欧風のドラゴンのイラストです。版木を回転しながら巧みに彫り進めてゆきます。
 

斎藤会員は年賀状を毎年木版画で制作されているそうです。さすが作業も早く的確ですね。
 

アウトラインを彫った後、「さらい」と呼ばれる余分な箇所を削る作業に移ります。矢野会員のさらいの様子です。慣れるにつれ早く深く彫れるようになってきましたね。力強く、かつ丁寧です。
 

右手前から池野会員、上田会員、左手前は斎藤会員、奥に渡辺会員です。木版画の制作は彫る作業に大変に手間がかかりますが、皆様、新鮮な気持ちで夢中で制作されています。
 

加藤会員は余白の部分を細い丸刀で浅く削いでいます。彫り跡を活かした摺り上がりが期待されます。
 

槇峯会員の彫り終えた版木と原稿です。複雑なチャイニーズ・ドラゴンのイラストですが、頑張りました!とてもよく彫れていますね。版木の彫りが終え、いよいよ摺りに入ります。
 

木版画の摺りでは版木、紙ともに湿らせておくことが重要です。適度に水分を含んだ和紙は摺り込むことで、水彩絵の具を吸い上げ、染めにも似た効果があります。
摺りのデモンストレーションの様子です。摺りは手加減匙加減で多彩に変化します。中でも浮世絵に多く見られる「ぼかし摺り」は特徴的です。水性木版の真骨頂とでも呼ぶべき「一文字ぼかし」が使われています。
 

摺りには独特の道具を使います。版面に絵の具をのせる筆「はこび」、絵の具と糊を混ぜるための「丸刷毛」「手刷毛」、摺りは竹皮製の「ばれん」を用います。
それぞれ江戸時代から継承されてきた日本独自の道具です。槇峯会員の作業の様子です。はこびで絵の具を版面に置きます。3色のグラデーション「付合せぼかし」にチャレンジです。
 

安井会員は丸刷毛と手刷毛を使って、版面に水彩絵の具と糊を混ぜています。絵の具を版面へ均一にのばすこと、摺りの際にはきちんと見当に合わせて、紙をセットすることが重要になります
 

矢野会員はスポンジを使った「あてなしぼかし」。現代的な手法ですが、細かな色の変化に有効です。
 

矢野会員の完成作品です。繊細なグラデーションが美しい、「一版多色摺り」の水性木版画年賀状が仕上がりました。
 

田井会員の作品は空間がユニークです。「彫りぼかし」の空が、シュールレアリスムの絵画の様です。
 

安井会員は重ね摺りによって、ドラゴンの深い緑がよく出ています。赤のアクセントが効いていますね。
 

槇峯会員は様々なカラーバリエーションを作成されました。色違いの作品を多数作ることができるのも、版画の利点ですね。
 

加藤会員は背景の彫り跡の効果が活きています。淡い紫色と力強い彫りが木版ならではの表情を生み出していますね。
 

斎藤会員の作品は木目まできっちりと摺られています。摺りには、しっかりと圧力を加える潰し摺り「ベタ摺り」、水分の多い絵の具に、柔らかい圧力で摺る「ゴマ摺り」など、様々な手法があります。
木目を摺りとるには、強い圧力と少量の絵の具をのばすテクニックが必要ですが、とても巧みに仕上がりました。
 

上田会員は枚数も多く摺られました。淡く美しい潰し摺りです。画面の中心から少しずらした余白には、メッセージが書き込まれるとのこと。アイデアですね。
 

渡辺会員は刷毛で描くように彩色しています。筆致の勢いとグラデーションがとてもバランスよく配置されています。絵画的ですね。中央のオレンジも効果的です。
 

池野会員は木版画で摺った後、ご自身で用意されたゴム印で謹賀新年とバラのスタンプを入れました。
 

完成作品です。スタンプとの併用で構図も絶妙な素晴らしい作品となりました。落款も素敵です。きっと、いただいた方は大変喜ばれますね!初めての木版画講座でしたが、皆様、大変な集中力と持久力を持って、年賀状の制作に取り組まれました。贈り主の変わらず元気な様子をも伝えてくれる手作りの木版画年賀状。講座を終えて是非、ご自宅でもチャレンジしていただければと思います。
 
佐竹講師、山本講師