メッツ絵画教室の講師の阿部です。今回は今井節子会員の静物画を紹介します。
ご覧いただければわかる通り静物画と言ってもただの静物画ではありません。
深海や海といったイメージと光が降り注ぐイメージを構成した作品となっています。光の表現はそれぞれのモチーフの質感を表すように的確に描かれています。メインとなる三つのモチーフは白い色ながら違う質感を持っています。
(二つの貝はそれぞれ光りかたが違いますね。)明度をしっかり合わせ、それぞれの白さを表しています。同じ白でも光の当たり方や質感の違いで白さに差が出てきます。透明にした薄い絵の具を何度も塗り重ねることで、奥行きがある白さを表現することに成功しています。彩度の高い絵の具を塗り重ねていることもキリッとした印象を作っている理由です。
今井会員の作品の魅力の一つにマチエールがあります。マチエールとは絵肌を表す言葉でありますが、今井会員は前述したように薄い絵の具を重ねていくように描写を進めていきます。そのためインパストをつけるようなタッチは入らないのですが、塗り重ねていくことで、しっかりとしたマチエールを構築していきます。描き出しは水彩絵の具のように始まるのですが、完成する頃には油絵具らしい堅牢な画面が出来上がっています。理由の一つとして、中間層でホワイトをしっかりと使っていることと描きこみながら適度な乾性油が入っていることが挙げられますが、気づくとなっているところもあるので、いつも不思議だな〜と眺めています笑。
今井会員の魅力の一つですね!
この作品には今井会員のこだわりがつまっています。質感の表現を始め、形も繰り返し修正しましたし、ビー玉の透明な表現、背景の色彩、光の注ぎ方、一つ一つを吟味していった結果がこの画面に表れています。この作品は長い期間を持って完成しました。難しいと感じたことも何度となくあったでしょうが、モチーフと向き合って作品を仕上げた胆力こそ、今井会員の実力を証明しているように思います。
六月に開催された楽々展には過去作を出品されました!
次回作では同じく静物画でありながら、自宅のモチーフを持ち寄り構成しています。どんな作品になるか楽しみです!