こんにちは、火曜日、土曜日を担当しております講師の山田です。
今回は、猪子会員様による油彩の風景が作品をご紹介いたします。

今回描かれたのは、ご本人が撮影された沖縄・万座毛の風景です。
猪子会員様は、近年実際に訪れた場所を題材に、風景画の制作に取り組まれています。
本作でまず目を引くのは、絶壁の存在感です。万座毛特有の石灰岩の岩肌は、形の複雑さだけでなく、表面のざらつきや風化による凹凸が特徴的です。
猪子会員様は細い筆を使い、点描のようにも見える緻密な筆致の積み重ねで、硬い岩の重量感と長い年月を経た独特の表情を見事に描き出しています。
光の表現も非常に丁寧です。
日差しが当たって明るく見える部分はもちろんですが、影の中にもわずかな色味の違いや反射光が織り込まれており、岩の立体感が自然に伝わってきます。
影の中にある色の豊かさが画面全体に深みを与えています。
また、海の描写も大きな見どころです。幾重にも青を重ねることで生まれる深い色合いは、沖縄の海特有の透明感と力強さを感じさせます。
手前の波打ち際では、白波の部分に絵の具の盛り上げが施されており、実際に波が砕ける瞬間の動きやしぶきの勢いが強調されています。
平面的になりがちな水面の表現に、物質的な厚みを持たせることで臨場感のある仕上がりになっています。
海・岩・空、それぞれの質感が丁寧に描き分けられていることで、風景全体に奥行きと開放感をもたらし、沖縄の自然が持つスケールの大きさが伝わってきます。
時間をかけた緻密な描写と観察力の高さが結実した、見応えのある風景画となりました。

制作中の猪子会員様です。

