こんにちは。講師の佐々木です。
7月に開催しました企画講習屋外写生会「柴又帝釈天」での
スケッチ会のご報告をします。
この屋外写生会は前回教室で開催しました「筆ペンで描く」の講習実施をも
兼ねた写生会です。
この日は前日まで台風が通過していた為に開催が危ぶまれましたが、
なんとか天気が回復して実施する事が出来ました。
とはいえ、快晴とはいかず蒸し暑い曇り空でしたが、
寧ろ日差しが無く多少風もあったので絵を描くには良い天候でした。
スケッチポイントとしては帝釈天の境内と参道がメインですが、
近くにある「山本亭」という日本家屋も含めた形で皆さんには選んでもらいました。
石黒会員は早速、山本亭の庭に伸びる小道を描き始めました。佐藤会員はまだ決めかねています。
ほとんどの方が境内を選ばれました。境内では観光客や参拝者が行き交っていましたが、
天候のせいかそれほど混む事もなく比較的描き易い環境でした。
また他の教室のグループもスケッチをしていたのでお互い良い刺激になったのではないでしょうか。
同じ境内でも何をどのように切り取るかによって色々な見え方が出来ます。
それぞれ思い思いに筆を進めていました。
沖野会員は企画講習で描いた所を選びました。
写真で切り取られていた所の続きや、見えなかった細部が見えてくるので、
何をどのように取捨選択していくのかがポイントです。
映画「男はつらいよ」で撮影に使われた、とらやさんでお昼を食べました。
午後に向けてエネルギーチャージです。
午後からは皆さん仕上げに向けてペースを上げていきました。
石黒会員は午前中と場所を変えて再スタートです。
長谷川会員が使っているスケッチイーゼルは水平にして使う事が出来るので、水彩を描くのに便利ですね。
途中から少し雨が降ってきてしまいました。傘をさしながらは非常に描き辛いですね。
屋根のある休憩所を選んだ佐藤会員は問題なく作業が続けられました。
雨が降ってきたので山本亭の中で講評会をさせてもらいました。
お茶とお菓子を皆さん注文して、リラックスした雰囲気の中で一人づつ発表してもらいました。
素敵な日本庭園をバックに贅沢な講評会になりました。
それでは作品を見ていきましょう。
松原会員さま
参道から見た帝釈天を墨ペンで描いています。立ってスケッチしたのは初めてだったようで
非常に疲れたとおっしゃっていました。
人が行き交う賑やかさと梅雨時の湿り気が混じり合った印象がでています。
このような描き方はやはり現場でしか表現できませんね。
長谷川会員さま
両側にお堂を入れ、木が中心にそびえ立つ、珍しい構図を選ばれました。
画面上の密度に比べ下側は手数が少なく左側に傾いたように見えます。
限られた時間の中で完成させるのであれば四隅を常に意識し細かい描き込みは
後回しにすると良いでしょう。
鎌田会員さま
遠近感を感じるシャープな構図と躍動的な木の描き方が合わさって独特な雰囲気が生まれています。
時間をかけて描き込もうとせず、濁る前に手を止める引き際が潔いので短時間でも、
しっかり特徴を掴んでいますね。
栗原会員さま
丁寧に描かれて枚数を重ねる毎に上達されているのが解ります。
遠近感がもう少しでてきても良いと思いますが、色味の重ね方が淡く
美しいので優しい印象が生まれていますね。
竹尾会員さま
抽象画のような色面構成で境内を描かれています。
真ん中下の白は画用紙の地の色をそのまま活かされています。
難しい黒色を大胆に使われていて有彩色が引き立つ個性的な絵になりました。
佐藤会員さま
山本亭を中庭から描かれました。グレートーンの中に温かい色味を感じますね。
もう少し影を強調できたら画面が締まり、強さと弱さの幅がある絵となるでしょう。
石黒会員さま
午後だけで仕上げられたとは思えないくらい良い密度ですね。
屋根の表現がもう少し細かく説明ができるとメリハリが生まれ地面と空が引き立つでしょう。
熊野会員さま
入会して間もなく初めての参加でしたが、描きたいものを絞っているので
しっかり描き込めていますね。今度はもう少し広い範囲に挑戦してみると良いですね。
光吉会員さま
本堂の高さが詰まってしまいましたが奥行きの感じられる良い構図ですね。
手前の参道の所に参拝者を描くと良かったですね。
須田会員さま
紙の白地が良い抜け具合で、空の形が良いリズムで切り取られていますね。
ハーフトーンと黒の割合も良いので主題が分かりやすいですね。
森会員さま
雨から避難してから描いた作品なので途中になってしまいましたが、
線の表現の幅があって小気味好いですね。
この描き方ならば下書きをせずにペンで直接描き始めても良いと思います。
沖野会員さま
企画講習で描いた場所を選んでいますが、企画の時の写真よりも
範囲を広く取っているので通りの曲がり具合が良く分かりますね。
中央の人物(寅さん)の見せ方をもっと目立つようにしても良かったですね。
本橋会員さま
建物の土台部分の重みがもう少しあると全体が締まって見えたと思います。
水彩色鉛筆での着色は軽くなりがちなので使う色をもっと変えると良いですね。
藤崎会員さま
ダイナミックな構図で量感が感じられますが、土台が曖昧になってしまったのが残念です。
屋根瓦の見え方や濃い墨の使う場所を変えると良かったですね。
小野田会員さま
濃い墨の細い線と薄墨のトーンがとても良いバランスです。
途中から降り始めた雨が予想外の滲みを作っていて魅力的な画面になっていますね。
自然がもたらすアクシデントは外で描いているからこそで、逆に良いエッセンスになりますね。
雨もあり時間的には短めでしたが、その分密度の濃い一日になりました。
皆さんお疲れさまでした。
担当 山本講師、佐々木講師