メッツ絵画教室講師の阿部です。中山惠太会員作品油彩画の「月雲の団欒」をご紹介いたします。
この作品は今月開催しました会員作品発表会「楽々展」に出展しました作品です。
穏やかな光が画面全体に充満しています。
月から発された光が雲の複雑な形を沿うようにに広がっていきます。
タッチを生かしながら雲の形態を追いかけたことで、まるでそれ自身に意志があるような形の広がりを見せています。
雲の色彩には穏やかながら様々な色相が使われており、作者が光に想像を膨らませながら描写を進めたことが見受けられます。
住居は自然光とは言い難い明るさで描かれており、月光の照り返し以上の不思議な光を表現しているようにも感じられます。
雲が筆のタッチを残した描き方なのに対し、緻密に描かれた住居には、現実的に描かれているようでこの世のものでない雰囲気が宿っているようです。
今作は中山会員のご実家の写真がモチーフとなっています。
作品内では特に説明はありませんが、作品にどこか柔らかな印象が宿っているのは、中山会員の「家」というもののイメージが定着されているのではないでしょうか。
奇抜な表現方法を取らず、真摯にモチーフと向き合った結果だと思います。
中山会員にとって今作はきっかけの作品であったと思います。
中山会員は長く教室に通われている方ですが、油彩作品は三作目です。
これまでは図像や色調を模することに注力していたように思いますが、今作はモチーフを端を発して、油絵具を使っていかに理想の状態にするか思案して描いた作品でありました。
形にすることの難しさと共に表現する面白さを味わっているように感じました。
次回作の構想ではより自分の表現に自覚的にエスキースを描いています。
自分は何に心を動かすのか。自分の描きたい絵とは何なのか。
私も制作のお手伝いをしていくのが楽しみです。
メッツ絵画教室の第22回「楽々展」に出品されました。
額装されると画面の緊張感が増しますね。ぜひ自宅に飾って眺めて見てください。